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なまはげ

 久しぶりに実家に帰ったら、しばらく床屋に行っていないせいか、おかんに、「あんた、なまはげみたいだ」と言われた。

 なまはげ……。いや、別に秋田県の話ではなく、神奈川県での話だ。

 自分の息子をなまはげと言う母親。言うか? ふつう(笑)

 平成生まれの甘ったれの子どもたちに、ぜひ、このエピソードを捧げたい。

 母親とはいつになっても、愛情であり、試練である。

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2010.01.29 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

うまい中華

 環八沿いのある街で、ものすごい変なおやじを見た。

 そこはちょっとショボめの中華系チェーン店。ちょっと小腹が空いたので、簡単にということで、私たちはカウンターに座り“麻婆飯”を食っていた。

 そこにそのおやじは現れた。

 店内に入る早々ものすごい負のオーラ。おやじは二人連れだった。おやじは、他の場所も空いてるのにわざわざ私たちと向かい合わせのカウンターに座った。へんに距離が近くてうっとうしい。

 年の頃は、50代半ばか。平幹二朗を三倍ぐらい陰気にしたような完全なイラチ顔。でも、長めの白髪オールバックやその眉間のあたりの表情からは、仕事のできるうるさ型の建築家あるいはデザイナーのような雰囲気をどこか漂わせている。

 もしかすると有名な人? 一瞬、そう思うが着ているモノをよく見ると、有名人にしてはへんなテカリのある安っぽいジャージ素材だった。

 そして、おやじは突然、暴走を始めた。

 おやじは、注文を取りに来た店員さんに向かって、なぜか、連れの人のオーダーを、勝手に「担々麺&麻婆飯セット」に決めて発注してしまった。驚いた連れの奥さん(らしき人)が「そんなに食べられない」と文句を言うと、「うるせーな、てめえ、バカヤロー」と店内に響き渡る声で鬼ギレ。店内に一瞬、緊迫した空気が流れた。

 どうやら、その“セットの一部を自分が食う”という勝手な計画を持ち、それを相手に伝える前に頭ごなしに粉砕されそうになったことが、彼のカンに障ったらしい。

 バカな話だ……。(気持ちはわからないでもないが……)

 そのくせ、発注しおえた途端、中華屋にいるのに大きな声で、「ああ、うまい中華食いたいなあ」なんて、そのさっき怒鳴った奥さんに親しげに話しかけている。

 リズムがつかめない。

 そして、時折凄む。

 「俺がなぜ天津飯を食わないか分かるか? それはごはんが白いからだ。あのごはんの部分が炒飯だったら絶対に頼んでる」、ってそんな情報どうだっていいがな。

 しまいには、私の連れの食べていた餃子をガン見し、自分も食いたくなって頼む。

 もう単なるガキだ。しかも、基本「負の人」だから会話に一切笑いがない。

 私たちは早々と食べ終わり、彼らの注文した品が運ばれるのを待つことなく店を後にした。

 店の外に出て、あまりの“恐ろしさ”にずっと観察してたと告白した私の連れに、とどめのバカな話を教えてもらった。

 彼は奥さんの分として「担々麺&麻婆飯セット」を頼んだのだが、そのおやじも結局麺と麻婆飯(ハーフ)のセットを頼んでいるので、サイズの違う麻婆飯を並べて両方食うという思いっきりバカな展開になると呆れながら言った。

 やっぱりそのおやじは、建築家とかデザイナーじゃないと思う。

 規模にしても絵柄にしても、センスなさ過ぎ。

 では、ハバナイスデイ。

2010.01.28 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

みなさ~ん、本物ですよ

 いつだったか浜田山の駅前でいいかげんな椅子とテーブルに座らされた坊主頭の平山相太(FC東京)がいた。

 駅前の日興系列の証券会社がイベントで呼んだみたいなのだが、お客さんはいっこうに集まらない。集まらないどころか、みんなその周辺を避けて通っている。

 そりゃ、ちゃんと着せときゃいいのに、サッカーのユニホームも着ていないので、単なる坊主頭の運動部の学生が座っているようにしかみえない。オーラとかそういう類の話ではなく、昼下がりの駅前のおばちゃんに対する当人の知名度の低さという、それ以前の根本的な問題だ。

 しかも、ただ座ってるだけ、
 ステージがあるわけではないし、ちゃんとしたイベントの看板もつくっていない。

 いろんな意味で違和感ありあり。いや、もちろん、平山選手に何の落ち度もない。きっと頼まれ、指示に従っているだけだ。でも、そんな彼、見ようによっちゃ、交通量調査のバイト学生にしか見えない。

 単に手抜きのイベントというだけでなく、遠くからみると完全なコントだ。

 あまりの人気のなさにあせった関係者は、群衆に向かいこう叫んだ。

 「みなさ~ん、平山相太選手ですよ。本物ですよ、本物ですよ~」

 ……その「本物ですよ」は都合三回繰り返された。

 幾人かの子供が恐る恐る近づき始めた。

 その前でにこりともしない平山の反応もまたシュールだ。

 本物の臨界が青空に溶ける。浜田山とはそういう街だ。

 引越は完了した。

 事務所は移転したが、近所のため、私はあいかわらずこの街を徘徊する。


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2010.01.27 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

お引っ越し

 さて、本日はお引っ越し。

 事務所移転および横浜本部開設のため一時業務停止です。

 寒中ですが、気合いを入れて仕切り直します。


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↑写真は仕切り直しに気合いを入れるアンディ・サマーズさん(ポリス)~伝未詳



2010.01.25 | コメント(0) | トラックバック(0) | その他

回想・ブツブツの旅

 この時期になると、ふと思い出す。

 それはこんな旅だ。

 (以下は以前、某雑誌の連載で書いたことがあったが、改訂のうえ掲載する。)


 七草がゆを食べ終えた頃、その旅は行われた。

 とある取材で、私は広島全県二泊三日という強行スケジュールをこなさなければならなくなった。

 東京・羽田空港出発は朝7時10分。前夜、どうしても避けられなかった打ち合わせと称する痛飲会で、深夜3時半まで外出していた私はもうヘロヘロ。4時半に帰宅。ほとんど睡眠を取る間もなく、自宅を6時頃出て、フラフラのまま広島行きの機中の人となった。

 今回の旅について、もう少し補足しておきたい。今回は広島のご当地うまいものを取材する旅。食べ物の写真を撮って、ご主人に話しなんぞを聞く、いわゆる「店取材」と言われるものだ。事務所に転がり込んできた仕事で、私は広島に行ったことがなかったので、好奇心からライターの女の子に頼み込むようにして、カメラマンとして同行したのだった。

 しかし、広島行きの飛行機の中でスケジュールを聞かされ、私の老いかけた身体に緊張が走った。取材地点は、東から、因島、尾道、福山、東広島、広島、熊野、呉、宮島。このとてつもない広さに点在する約10ヶ所をアポイント通りに取材して回らなければならないとのことだった。われわれの足はレンタカー。運転は、そう私だ。

 朝8時半頃、広島空港に到着した。朝飯も食べず、さて、目指すは東南部・瀬戸内海に面する某エリアだ。私たちは、広島の中央部を東西に走る山陽自動車道に乗り、10時のアポイントに間に合うようクルマを走らせた。

【朝の水軍鍋】

 その旅館のオヤジは、なぜか異常にノリのいい人だった。私たちの到着を知ると、「あ、来たの、ごくろうさん」と、妙にすっとぼけた態度で、撮影のために用意する「ブツ」を仕込むために、まだ人気のない厨房へと姿を消した。

 その「ブツ」とは、「水軍鍋」と呼ばれる鍋料理だ。

 「水軍鍋」とはなんぞや。

 「室町時代から戦国にかけて因島を本拠地として活躍した村上水軍が出陣する前夜に食べたといわれる水軍秘伝の鍋。瀬戸内海の魚介類と海草、なかでもタコは必ず入れたという。刺身でも食べられる魚の新鮮さと豪快さを楽しむ鍋だ。2~3日前に要予約」……。

 これが、現地に行く前にガイドブックで確認した内容だった。

 私たちは、厨房に隣接するダイニングで撮影の準備を整えながら、その「ブツ」が出てくるのを待っていた。しばらくすると、蓋がカブト状になっている空の鍋と、タライ一杯の魚介類が、私たちの目の前に運ばれてきた。

 カメラをカチャカチャと操作しながら、私は、「おー、おいしそうですね。やっぱり、みなさんに人気のメニューなんですか?」と、そのオヤジに話の水を向けた。

 「いやー、いろんなおいしいもんあるのに、今どきこんなもん食べないだろ」と、オヤジはぶっきらぼうに言った。

 「は?」

 私たちはあっけに取られた。なぜなら、私たちは、この「おいしいであろうとされる」料理を不特定多数の人々に推薦するためにここにやってきたからだ。

 オヤジは鍋に魚介類(タコ、ワカメ、カワハギ、サザエ、アナゴ、タイ、エビ、カキ、ハマグリ、その他大勢)をたたき込み、グツグツと煮はじめた。その時、オヤジは、またまた気になることを言った。

 「いやあ、やっぱりアラ取ったり下ごしらえした方がいいんだよ。でも、いろいろやるより、この方がいいでしょう? 絵になりやすいし(笑)。去年だけで、テレビが五回も取材に来るから、すっかり慣れちゃったよ(笑)。味付けもいいよね、しなくて。ホラ鍋の蓋開けるよ。湯気がブワーッとなった方がいいでしょ」。

 どうやら、今目前でグツグツと煮えているワイルドさを売り物にするこの鍋は、魚屋さんから持ってきたものをぶつ切りにしたそのまんまの状態であるらしい。もしかしたら、ウロコとかもそのまんまなのか。

 まだ生きているエビが熱さに驚き鍋から床にピョーンと勢いよく跳び出した。オヤジは、「おうおう」と笑いながら、床からひょいと拾い上げ、そのまま鍋に入れた。

 一瞬の間の後、ライターの女子が、オヤジにこう尋ねた。

 「豪快ですね。やっぱり、昔、この地にいた村上水軍もこれを食べていたんですか?」。いよいよ、取材の核心だ。

 オヤジは言った。

 「そんな昔のことなんか分かんないよ。たぶん、そうだろうって観光協会が言い出して、この鍋ごと買わされたんだよ」。

 「はあ?」。

 私たちふたりは固まった。

 このオヤジ、ぶっちゃけすぎ。心の中でそう思った。

 「良かったら、食べていきなよ。どうせ捨てちゃうんだから」。

 取材後、オヤジはこう言った。

 私たちは黙って用意された鍋の中のものを食べはじめた。

 顔面ばっかりの魚の数々、まったく切っていないワカメ、泳いでいたそのままなのにへんな鉢巻きを巻かれたタコ、やっと成仏したエビを食いきる。
 時間は午前10時30分。ビールはなし。味付けもなし。おまけにポン酢もおやじが出し忘れたからなし……。

 野趣というよりはどちらかというと懲罰に近い。

 煮過ぎたサザエにかじりついてみた。ふと、風呂のゴム栓を思い出した……。

 取材が終わり、クルマを運転している車中、ふと額に手を当ててみた。

 おでこに思いっきりブツブツが出ているのを発見した。

 私は急いでコンビニでおにぎりを買い、何かのバランスを取ろうとした。


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2010.01.22 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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