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【今週の210円】 『太宰治 主治医の記録』(中野嘉一著、宝文館出版)


 モルヒネの一種パビナール(麻薬)中毒に陥った太宰治は昭和11年、板橋の武蔵野病院という精神病院に一ヶ月入院した。太宰はその体験を「私の生涯を決定した」と断言し、『人間失格』などの太宰文学の最大のモチーフとなった。その間の太宰の微妙な様子を明らかにするカルテが公開され、それをもとに主治医であった著者が冷静に論評を下したのがこの本である。帯にある通り、「太宰治研究の第一級資料」には違いはないが、現代の書籍のように、そこにスキャンダラスな、あるいは露悪的な視点はない。昭和55(1980)年の作品。発言にはインテリジェンスを、書籍には格調の高さ。よくもわるくもそんな昭和後期までの風潮が滲み出るような本だ。飛び抜けたおもしろさはないが、じんわりと(環境や現象としての)文学を感じる、そんな作品である。




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2014.04.29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・ふんどし本の世界

『達磨寺のドイツ人』黒澤明(脚本)


 ある日、中山道のことを調べていて、高崎にある少林山達磨寺のことが気にかかった。何でもこの寺を舞台にした脚本が存在するというのだ。『達磨寺のドイツ人』黒澤明監督の1941年の作品である。残念ながら映画化されることはなかったが、この脚本が、岩波書店『黒澤明全集』第一巻に掲載されているというので、さっそく入手して読んでみた。

 昭和14(1939)年、第二次世界大戦勃発前、国際社会の緊張が高まる時代が、この物語の背景である。山奥の静かな寺、達磨寺にドイツの有名な建築家、ルドウィッヒ・ランゲが滞在することからこの物語は始まる。日本の建築を知るため、日本の風土に馴染むため、憧れの環境で日本建築に関する草稿をしたためるため、その60歳すぎのドイツ人は、一年あまりに渡って滞在した。

 見慣れぬ白い大男に村の人々はとまどいの表情を見せる。最初は怖がっているが、次第に心を開いていく子どもたち、国際情勢の変化に応じて態度を変える大人たち、そばで温かく接してくれる山寺の人々。静かな日常ながらも時折感情の発光がある。それはまるで美しいモノクロフィルムだ。70年以上も前の静謐な世界。時折垣間見られる情熱の灯り。その幾多の光景がいまにも触れそうな質感を伴い、次々と頭のなかで再現されていく。黒澤監督の才気には改めて敬服せざるを得ないが、そのことよりもまず、この脚本を「味わう」時間を持てたことを愛おしく感じた。

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2014.04.24 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・ふんどし本の世界

Kindle版『誰にも見つけてもらえない』好評配信中!

誰にも見つけてもらえない


Kindle版『誰にも見つけてもらえない』が発売されました。
おかげさまで多くの人が無料ダウンロードしていただきました。
みなさん、本当に無料とおっぱいが大好きです。

現在は、無料キャンペーン中は終了しましたが、
引き続き、よろしくお願いします。
ぜひ、ダウンロードしてくだされ。

Kindle版『誰にも見つけてもらえない』

チンパンジー船長から巨乳好き監督ラス・メイヤーまで。
誰にも見つけてもらえない、その美しき漂流人生。


<内容紹介>

本書のテーマは「漂流」である。
誰にも見つけてもらえない……。そんな不安で、ちょっぴりこそばゆい感覚の先にはいったい何が待ち受けているのか。
あまりにも非合理的、あまりにも無計画、あまりにもマーケティング無視。
おかしくも悲しい、そして何よりもパワフルな人生の「漂流者たち」。
数々の偉業をなすも、誰にも見つけてもらえなかった、そんな11人の美しき漂流人生を味わう。


【目次】

□第1話  自転車無銭世界一周の旅(中村春吉)

□第2話  バルサの船の実験漂流(トール・ヘイエルダール)

□第3話  華麗なるセルフ漂流(ラナルド・マクドナルド)

□第4話  気球に乗った中年(サロモン・アウグスト・アンドレー)

□第5話  なんで私は宇宙にいるの?(チンパンジー・ハム船長)

□第6話  巨乳の大海原を漂う男(ラス・メイヤー)

□第7話  お嬢様のお花型漂流人生(マリアンヌ・ノース)

□第8話  酩酊トリップの行き着く先は!?(泉山三六元大蔵大臣)

□第9話 「口上」は放浪の地肩(アールミン・ヴァーンベーリ)

□第10話 パリの匂いのする男(モーリス・シュバリエ)

□第11話 やっぱり無人島が好き!(トム・ニール)


<著者プロフィール>

Matt Black Production●マットブラック・プロダクション

コラムニスト・中丸謙一朗を中心とする企画者集団。ライター、映画評論家、映像ディレクター、文献調査師など、職業、得意分野はさまざま。クラウドの漆黒の闇のなかから珠玉の笑いを生み出そうともがき続ける野郎たち。

2014.04.22 | コメント(0) | トラックバック(0) | その他

Kindle版『誰にも見つけてもらえない』発売!

誰にも見つけてもらえない


Kindle版『誰にも見つけてもらえない』が発売されました。
古い作品ですが、読みやすく、小咄的資料(笑)にも最適です。
現在は、無料キャンペーン中。ぜひ、ダウンロードしてくだされ。

Kindle版『誰にも見つけてもらえない』

チンパンジー船長から巨乳好き監督ラス・メイヤーまで。
誰にも見つけてもらえない、その美しき漂流人生。


<内容紹介>

本書のテーマは「漂流」である。
誰にも見つけてもらえない……。そんな不安で、ちょっぴりこそばゆい感覚の先にはいったい何が待ち受けているのか。
あまりにも非合理的、あまりにも無計画、あまりにもマーケティング無視。
おかしくも悲しい、そして何よりもパワフルな人生の「漂流者たち」。
数々の偉業をなすも、誰にも見つけてもらえなかった、そんな11人の美しき漂流人生を味わう。


【目次】

□第1話  自転車無銭世界一周の旅(中村春吉)

□第2話  バルサの船の実験漂流(トール・ヘイエルダール)

□第3話  華麗なるセルフ漂流(ラナルド・マクドナルド)

□第4話  気球に乗った中年(サロモン・アウグスト・アンドレー)

□第5話  なんで私は宇宙にいるの?(チンパンジー・ハム船長)

□第6話  巨乳の大海原を漂う男(ラス・メイヤー)

□第7話  お嬢様のお花型漂流人生(マリアンヌ・ノース)

□第8話  酩酊トリップの行き着く先は!?(泉山三六元大蔵大臣)

□第9話 「口上」は放浪の地肩(アールミン・ヴァーンベーリ)

□第10話 パリの匂いのする男(モーリス・シュバリエ)

□第11話 やっぱり無人島が好き!(トム・ニール)


<著者プロフィール>

Matt Black Production●マットブラック・プロダクション

コラムニスト・中丸謙一朗を中心とする企画者集団。ライター、映画評論家、映像ディレクター、文献調査師など、職業、得意分野はさまざま。クラウドの漆黒の闇のなかから珠玉の笑いを生み出そうともがき続ける野郎たち。



2014.04.02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・ふんどし本の世界

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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