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書評『スタートは四畳半、卓袱台一つ』

 梶原一騎先生の作品や彼に関する評伝などはいくつも読んでいるが、この本はちょっと変わったテイストだ。

 その他の評伝は実弟の真樹日佐夫先生を含む男性陣によって書かれているので、梶原一騎の「ふんどし感」にさらにいろいろな匂いをふりかけ、マニアにはたまらないスメルとなっているのに対して、この本はなぜかお嬢様チック。

 それもそのはず、著者は、先生と二度も結婚した奥様なのである。

 男の権化・梶原先生に対する女性からの目線が新鮮といえば新鮮だが、読みやすい筆致とは裏腹に醸し出される女性ならではのもたつき加減が、男道のスピード感を狂わせ、読み手である私たちを微妙にイラッとさせる。

 いや、これは決して著者である奥様を批判しているのではなく、それほどまでに梶原一騎の男道は偉大であり、また、奥様の存在がガーリーなのだ。

 男と女、それは対であり平行であり、また、遠くから眺めるとひとつの塊である。

 本書の中でこんなエピソードが紹介されている。

 伊豆半島の浜にあるサザエやイカ焼きを売っているある出店での出来事。

 梶原一騎は大好物のサザエのつぼ焼きを頼み、夫婦二人で食べようと焼き蛤やイカ焼きも注文した。焼き上がるのを待っていると、ふと側にいた先客の「小学校に行っているか行っていないか」ぐらいの男の子に目が留まった。

 それを見た梶原の顔はゆがみ、不愉快千万という表情になった。どうやら、その男の子が(イカ焼きではなく)サザエのつぼ焼きを食べていたのが気に入らなかったらしい。その場を離れた後、梶原は妻にこう言い放つ。

「子どもにはなあ、子どもの味覚っていうのがあるんだよ。大人になってから分かる微妙な味覚っていうのは子どもには分からないようになっているんだよ。子どもはほっといてもいつか必ず大人になるんだ。それまでは子どもの味を楽しませてあげなきゃよう。子どもが可哀想だろうが。
 子どものうちから大人の味覚にさせるんじゃねえよ。子どもに子ども時代を満喫させてやれって! 大人のようなガキにしちまってよう。大人が悪いんだよ、自分たちだけサザエ食ってりゃいいんだよ。いい親ぶりやがって。あんな親が子どもをダメにするんだ、あんな親がよ。子どもが大人になる楽しみをなくしてやがるんだよ。大人と子どもは違うの! 大人は子どもより偉いんだよ! だから早く大人になって、父親が食べてたサザエを食べるぞ、と思うんだろう?」

 突然怒りまくる梶原の側で「きょとんとした」思いを綴る奥様。

 「俺の守護神がな、どうやらおまえのことを好きみたいだ」

 これは、そんな奥様に、梶原一騎が死ぬ前にかけた最高に素敵な言葉だ。



スタートは四畳半、卓袱台一つスタートは四畳半、卓袱台一つ
(2010/01/07)
高森 篤子

商品詳細を見る



スタートは四畳半、卓袱台一つ』高森篤子著(講談社)
ふんどし度 ★★★


2010.04.02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・ふんどし本の世界

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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