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「おまえ、それじゃマンガだよ!」という現代を、まったりと斬る! コラムニスト中丸謙一朗の公式ブログ
半年後ぐらいにその理屈がわかることがある。
昨年の「禁煙奮闘期」、私はふと口内の焦げ臭さを感じ、それが気になって仕方がなかった。
なぜか、口のあたりから微妙に焦げ臭い匂いを感じる。俺自身のどこが焦げ臭いのか、焦げてもいないのに焦げ臭いわけがない。
必死になってネットで調べる。
口内の焦げ臭さ、口内の焦げ臭さ……。
ある記事によると虫歯がある場合、焦げ臭い匂いがすることがあるという。
でも、今、歯はまったく痛くないし、禁煙してからというもの、何かにつけて歯ブラシを加えているので、そう、口腔環境は完璧なはずなのだ。
もしかすると、これはタバコを止めた事による精神的なことなのか……。きっとそうに違いない。幻覚、幻聴ならぬ幻臭。もし、そうだとしたら、一大事だ。
さらにもうひとつ。
その頃、電車に乗るとすれ違う人の顔がものすごくでかく見えた。ちょっと、ひるむ感じがした。誰かに一度だけぽつりとその思いを打ち明けた。
「人の顔がでかくて怖い……」
人類の顔の大きさが急激に一律に変化するわけではないので、物理的に大きくなったのではないということはよーく考えてみるとわかる。だとすると、みんな昔に比べて異様にそれぞれの距離が近いのだ。特に電車に乗っている時など、私の顔のすぐ側にみんなの顔がある。おいおいみんな近すぎだよ。変な傾向だ。そう確信を持った。
いや、待てよ。もしかすると、そんなことではなく、これも私の精神状態が作り出した一種の幻影なのかもしれない。だって、タバコ吸ってないから。タバコが吸えなくてこの夏ずっと心の中に寒々しいブリザードが吹き荒れているから……。
そして、半年後。最近になってわかった。
残っていた親知らずをひでくんに抜いてもらったことは前に書いたが(親知らず)、その抜いた歯の奥には焦げ茶色に変色した虫歯の病巣があった。これが焦げ臭さの立派な原因だ。
人々の顔のでかさは去年作り替えた眼鏡のせいだ。不鮮明な画像に慣れきっていたため、鮮明に矯正された画像に脳の調節が追いついていなく、クリアに見える分だけ3D的に押し迫って見えている。たぶん、そんな話だ。
だとすると、幽霊とかUFOの話っていうのも、こんな話か……。
世の中とは、感心するほど神秘的ではないし、軽蔑するほどわかりやすくもない。
半年後ぐらいにそのたいていの理屈はわかる。たぶん。
ただ、半年間もそのことをずっと心に留めていられるかの方が問題だ。
情報洪水の中で、ふと立ち止まる。
2010.04.05 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!
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Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。
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