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ある編集者の死

 ある編集者が死んだ。

 某大手出版社に在籍した、私の恩師とも呼ぶべき人だった。

 ジャーナリズム系の雑誌の編集長としてならし、数多くの著作物で世間を賑わし、とてもロマンチックな企画の実現に奮闘した、そんな素敵な人だった。

 私とその編集者のつながりや15年におよぶつきあいの話はいろいろとあるが、今はとても語る気になれない。

 そんなにしょっちゅう会っていたわけでもないし、そんなにたくさんの仕事をしたわけでもない。年齢も一回りは違うし、感性や趣味などもどちらかというと違う。

 ただ、いつも、私は、その編集者のことを心のどこかで気にしていた……。



 今、出版不況と言われている。電子書籍への転換も急務だ。

 いったい編集者はどこに向かっているのか。

 「編集者」という言葉が好きで、その職業を目指し、意識し、その言葉に恥じぬように一生懸命に仕事をしてきたつもりだ。

 最近、編集者という言葉が安い。
 多くの若い人が何気なしに編集者を名乗る。既存の流通ルートに乗らない自主制作の書籍を出す“出版社”も、今じゃ、めずらしくない。ま、それはいい。

 でも、初版1000部、事務所に店舗が併設で、コミュニティ内の(ツイッターによる)口コミが宣伝、本当に欲しい人だけが買ってくれたら……って、冗談じゃない、出版って、もっと公で社会的に意味のある行為ではなかったのか。

 「文化」なんて青(あほ)臭い言葉を持ち出すつもりはないけど、微力ながらも、大きな波として世間にとって何らかの(意味のある)アピールをするため、そんなチャンスを自分たちのものにするために、編集者と書き手は結託し、汗をかき、恥をかき、精進するんじゃなかったのか。

 自分らしく自分の感性のまま、自分の好きなことを好きな仲間たちと楽しく、そして、その結果がお金になる、ワタシは自由……。いつから、そういうことになったのか。そこにあるのは、まるで薄墨で書かれたような編集者という文字……。

 じゃ、おまえはどうなんだ? たぶん、そう言われるだろう。だから、その名に恥じないよう、その歴史に負けないよう、歯ぎしりしながら過ごす。

 ある編集者が死んだ。私のお手本としていた編集者だ。

 訃報を聞いた夜、編集者という文字が滲んで見えた。

 私は今でも「編集者、コラムニスト」と名乗っている。

 どっちつかずなのは承知のうえ、両方手放したくないから、恥ずかしげもなく使い続ける。

2010.04.10 | コメント(0) | トラックバック(0) | その他

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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