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書評『歌舞伎町・ヤバさの真相』

 〇八年六月に発生した秋葉原通り魔事件で、なぜ犯人である派遣社員の青年(当時二十五歳)が犯行現場に秋葉原を選んで、歌舞伎町を選ばなかったのかという疑問を口にする人がいた。歌舞伎町を選ばなかったのは、歌舞伎町がすでに若い世代の関心の外だからであり、時代に病むほど鋭角化した若い世代の感覚にとって、歌舞伎町が陳腐化し、老朽化していることの証明ではないかというのだ。歌舞伎町としては事件の現場になることで、今以上にヤバさのイメージを増幅したくはない。犯行現場に選ばれなかったことは歌舞伎町にとって救いであり、幸いだった。なぜ、凶行の現場にならなかったかという疑問自体が不謹慎、非常識だと非難されよう。だが、それでも「なぜ選ばれなかった?」は一班の真理に通じそうな疑問ではあろう。(あとがき~老いていく街、興る街より)

 はっきり言って、最近、新宿という街が死んでいるような気がする。

 横浜人と言っておきながら、なんだかんだで16年も杉並に住んでいる私の本拠地は新宿だった。今でも、週末の夕暮れ時など、この街をうろうろとするが、何か最近おもしろくない。「怖い」でもない、また、盛り上がるでもない。渋谷や下北沢ほどガキっぽい街ではないが、かといって大人の街では、“もはや”ない。

 何だかワクワクさせるものが少ないのだ。

 最近、情報通信を駆使し、むりやり街興しをするような輩の宣伝文句がかまびすしいが、本来、街というものは、そういうふうに「興す」とか「寝かす」とか一部の人間がどうこうする話ではなく、街のエネルギーというのは、その土地とそこに住む人間との有機的関わりが生み出した、あるいは生み出している「行動の残像」“地霊”のようなもので、まるで生きて呼吸しているかのように変化し、成長し、また、衰退していくものなのだと思う。

 新宿は生きている。今は少しおとなしくしているだけ。本書を読むと、そんな新宿という街の底力を感じる。

 しかし、最近の時代の加速力は侮れない。底力のある街を平気で叩き潰す威力を持つ。

 多くの傷ついた人びとを癒してきた一方で、多くの「邪悪」を生み出す「つれない」街・新宿。だが、この街を愛し、必要としている人がいる限り、この大海のような街は、いつまでも存在し続けるのであろう。



歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)
(2009/06)
溝口 敦

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 ふんどし度★★

2010.06.11 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・ふんどし本の世界

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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