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最後の親知らず

 今、執務デスクに座り、手に持った歯をじっと眺めている。

 楽しい。そして飽きない。いつまでもいつまでも眺めていられる。

 昨日、歯を抜いた。上下左右4本ある親知らずのうちの一本が残っていたのだが、多少の違和感と口内の清掃環境の関係で、ひでくんに抜いてもらったわけだ。

 親知らずとは、ヒトの歯のうちで最も遅く生える第三大臼歯のこと。英語では、「a wisdom tooth (知恵歯)」と言うらしい。

 この親知らずを抜いたということは、最後に残った微かなる「知恵」の消失と取るのか、まだ親の関心下にあった時期(段階)からのいまさらながらの完全なる離脱と取るのか、とにかく、歯を抜くなんて久しぶりの体験。

 改めて抜いた歯をよく観察してみると、おもしろい。
 そこには、親どころか、俺の知らない自分自身の身体の歴史が刻まれている。

 まず、隣の歯とも隣接し、また奥歯の頬側の少し変な位置に生えていた歯なので、あまりよく磨けていなかったことがわかる。歯の奥側の突端が虫歯になり黒く穴が開いている。
 よく、これで痛くなかったなあ、俺、知らねえよ、こんなの……。

 5月にタバコを止めて、すっかりクリーニングしてもらったはずなのに、歯の陰になっていた部分にニコチンの痕跡を発見する。まだ、ここにいたんか、あんた……。

 さらによく見ると歯の咬み合わせ部分が様々に摩耗していることもわかる。
 何十年も何十年も、毎日たいへんだなあ……。

 そして、何と言っても、歯茎に隠れていた根っこの部分。
 へたなソフトクリーム屋のあんちゃんの仕事のような、先端が左の方にひゅるりんとひん曲がったへんな形。

 「はじめまして」という感じなのだが、ずっと歴史をともにしてきた自分自身の一部でもあるわけで、「そうか、おまえ、そういうふうになってたのか、がんばってたなあ」、みたいな、まるで30年ぶりの同窓会に行ったかのような、変に素直で、すがすがしい気分……。

 上の方には金さえあしらわれたデスクの上にある最後の親知らずは、デスクライトの反射を受け、ときおりきらりと光を放つ。

 こうなると、俺にとっては、立派な骨董品だし、毎年、年賀状出したいぐらいの大切な旧友。友情の証として、携帯ストラップにしたいぐらいだけど、絶対気味悪がられるからやめとく(笑)。

 では、ハバナイスデイ。

2009.11.14 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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