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悲しみの泉

 先日、中島みゆきの「夜会」を見に行った。特別に彼女のファンというわけではないのだが、一度は行ってみたいと思っていた。非常に才気に溢れた舞台。この不景気の時代、いわゆる「タイアップ」なしで、本当にファンからのお金だけで「興業」できる底力に恐れを抱いてしまう。

 ショーの詳細はこの稿では触れないが、特筆すべきは、お客さんの平均年齢の高さ。この私が下手したら若手になりかねないほどの高齢化ぶりである。
 そして、おやじに囲まれているので、開始からずっとほんのりと周囲におやじ臭が漂っているのが悲しい。

 中島みゆきのショーは、コンサートというより演劇的要素の強い構成で、かなり難解なテーマを彼女の書き下ろした音楽で表現していく。大衆性によったエンターテインメントというよりはむしろ、音楽作家として本当に表現すべき「純文学的」な試み、そんな思いを感じさせられながらショーは進んでいく。そして、その間、おやじの加齢臭は途絶えることなく漂い続ける。

 タンスの臭い……。おやじ臭に関して、人それぞれの感じ方があるが、私の場合、どちらかというと和風である。今回の「夜会」のテーマも和風であった。周囲の加齢臭が意味もなくその文学的テーマに深みを与えてしまっていた。

 ある医者が加齢臭のことを「人間の身体は約60パーセントが水分なので、身体の中にひとつの大きな沼があるようなもの、多少の入れ替えがあるとはいえ、長年の蓄積によって、その沼が腐ってくる。その腐敗臭が加齢臭の正体である」、というような趣旨のことを言っていた。

 悲しい。ものすごく悲しい……。

 人の沼は腐る。「名もなき君にも名もなき僕にも」である。

 その夜はいい夜だった。

 ショーがはね、家路に着いた。いろんな臭いに塗れながら満員電車で帰った。

 家に帰って、Jackson Browneの「Fountain of sorrow」(悲しみの泉)を聞いた。ふと、胸元が気になり、自分の臭いをくんくんと点検した。

2009.12.21 | コメント(0) | トラックバック(0) | マンガ的!

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プロフィール

中丸謙一朗

Author:中丸謙一朗
職業:編集者・コラムニスト
1963年生まれ、横浜市出身。立教大学経済学部卒。1987年、マガジンハウス入社。『ポパイ』『ガリバー』『ブルータス』などで編集を手がけた後、独立。著書に『大物講座』(講談社)、『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社・扶桑社文庫)、『車輪の上』(エイ出版)、漫画原作『心理捜査官・草薙葵』(集英社コミックス)など。編著多数。

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